57.山の芋(ヤマノイモ)
麦とろを噛まずに飲み込んでも、胸やけや消化不良で悩まされることがないのは、誰でも経験しているとおりです。これはヤマノイモに消化酵素のジアスターゼが、他の食品にくらべて極端に多いためで、ほかにも多くの酵素が含まれ、米飯その他のデンプン質食品もすみやかに消化してしまいます。
ヤマノイモは漢方では山薬(山のクスリ)と書いてサンヤクといい、強精強壮薬として大変優れた薬効を持っています。まさに医食同源を代表する食品なのです。
近年、漢方薬の普及に伴って、中高年以降の強壮薬として有名な薬となった八味丸(はちみがん)の主成分のひとつがこの山薬です。
漢方では消化器系を補い、肺や腎の働きを活発にするとして、滋養強壮・消化促進効果があり、ねあせ・衰弱時の発汗・下痢・糖尿病・頻尿・おりもの・腰痛・咳嗽(セキ)などに効くことが分かっています。
消化酵素の働きを期待する場合は生で、逆に冷えて下痢したり、夜間尿の多い人は、熱を通して食べる方がより効果的といえるでしょう。いま話題の薬膳には、必ずこの山薬の乾燥したものを使ったスープ料理が登場します。