39.鯉(コイ)
5月の青葉薫る風を受けて、青空に泳ぐ鯉のぼりは勇壮なものです。江戸時代端午の節句には、武士は家紋入りの旗差物(はたさしもの)や吹き流しを家の前に飾ったものです。これに対抗して町人は、黄河の上流にある竜門において、他の魚の登れない急流の瀬を見事に泳ぎ上がって竜となるといわれる出世魚の大鯉を、青空を水に見立てて空に泳がせました。
中国の祝い料理には必ず鯉が供され、登竜門の出世を願いますが、鯉はそれだけでなく健康増進の薬膳としての効用を持っているのです。
コイをぶつ切りにし、骨も内臓も一緒に入れて味噌汁にしたものがコイこくですが、昔からお乳の出のよくなる食物として親しまれています。中国の古典<本草綱目>にもコイの肉を煮て食べると「セキ・ノボセ・黄疸・浮腫によく効き、水気を下して小便の出をよくする」と記されています。
心臓病・腎炎・脚気・産前産後のむくみには、あずきと一緒に煮て、その煮汁とともに食べると効果があります。その際むくみには塩分は禁物ですから、できるだけ薄味で。
コイが最もおいしい季節は8月です。4・5・6月の味の落ちる時期を除けば、いつでもおいしく食べられます。