55.ビワ
ビワは夏の果物で、口当たりよくさわやかな香りで愛されています。その花も葉も木の皮もそれぞれの効能があります。
ビワのオレンジ色の色素にはβ-カロチンが含まれ、体内で徐々にビタミンAに変わり、目の網膜の機能を保ち、粘膜の乾燥を防ぎ、疲労や視力の回復に役立ちます。同時に体の酸化を防ぐことによって、動脈硬化や老化を防止する効能もあります。
また、ビワの渋みにはポリフェノール類のタンニンという成分が含まれ、抗酸化作用や抗老化作用があり、慢性病の回復にも役立ちます。
ビワ葉は、有名な薬草で、咳や嘔吐、暑気あたり、疲労回復によう利用されます。塗り薬として外用したときは皮膚の炎症の改善や痒み止めに効果があります。しかし、葉の裏面に細かい毛があり、そのまま煎じて毛が浮き出た汁を飲むと、のどに刺激を与えて、かえって咳がひどくなります。咳の場合には、乾燥した葉の裏にある毛を除いてから使いましょう。ミツで炒めてから他の漢方薬と一緒に使います。嘔吐の場合にはハチミツを混ぜずに毛を除いたら布で別包にして使います。江戸時代の川柳に「枇杷と桃葉ばかりながら(憚りながら)暑気払い」という句が残っていますが、ビワ(枇杷)の葉は暑気を払う効能があることを示しており、庶民の間でも愛用されていたのです。